note

『Spider-Man Versus Wolverine』(1987)#1

SMVWに至るまでのローガンさんとピーターの共演作をだいたい読み終えたのでようやく読みました
重…あとちゃんと名作
有名な話であらすじ知ってるしそこまで衝撃受けないだろうと踏んでたんですがふつうに凹みました
(あらすじ:取材でベルリンを訪れたピーターさんは、同行者であるネッド・リーズがホテルで何者かに殺されているのを発見する。同じくベルリンにて、ローガンは元恋人でスパイであるチャーリーと再会し、(色々あったのち)組織から追われ死を望む彼女を自ら手にかけようとする。🕷くんは決死の思いでそれを止めるが、逆にチャーリーにスパイダーセンスを利用され、不可抗力で彼女を殺してしまう)
ヘルズキッチンの行きつけの店を訪ね、経営主のソフィとバートの死体を偶然見つけ「マスクをつけたままでは呼吸できなくなる」ような状態に陥りながらも、自分の行いが犯人を裁判に導くのだと自分自身を正当化して死体の写真を撮り、それをビューグル社に売りに行き「彼女(ケイト・カッシング)が伝票にサインをしたらすぐ家に帰って吐こう」と考えているピーターさん
↑まだベルリンにも行ってないこの時点で結構胃に来る
このあとソフィとバートがKGBのスパイであったことをネッドが突き止め、ピタくんがネッドと共にベルリンへ取材に行くことになるんですけど、展開の仕方が巧い

以下箇条書き
・MJの存在の心強さ(とはいえそれが全面的にピタくんの精神的救済に繋がるわけではないあたりが重層的)
・想像の20倍くらい優しいローガンさん
・善人である🕷を大人の世界に巻き込みたくないローガンさん
・ローガンは善意でピタくんをアメリカに帰そうとしたのに、ピタくんはそのせいでネッドを守れなかったのかもしれないと葛藤する展開、巧い
・🕷「(ウルヴァリン…だめだ、だめだ、だめだ…)」🐺💪🔪「(🔪💥 🔪💥 🔪)」(冒頭のローガンの殺人シーンと同じ演出)←巧い
・ドイツのコスチュームショップで黒のボディスーツを求めたものの売っておらず、店主に「売りものじゃないが息子が明日パーティーに着ていく予定のものならある。黒じゃないし馬鹿な見た目だが」とスパイダーマンのコスプレ衣装を取り出しながらと言われたときの🕷くん(澄み切った瞳で)「(死んじゃいたい)」(「I Just want to die.」)
・「(死に直面してジョークを言うなんて馬鹿げてる…そう気付く頃には僕はもう800メートルも離れてる。)」「(もう後戻りはできないんだ。僕は正しいことをしなくちゃならない。本物のスーパーヒーローのように)」←これ端的にピーター・パーカーさんの人生
・ローガンさんとチャーリーの関係性…
・終盤の展開の全て…
・偽造パスポートで何故かピーターを名乗るローガンさん(パスポートを確認する税関の職員に)「ピートって呼んでくれよ」←なにこれ
・🕷「(帰宅したのは10時ごろ。請求書の方が僕より先に家に帰っていた。スーツは僕が放り投げた部屋の隅に丸まっていた。それを軽蔑の目で見る。僕はこれをのせいにしようとしている)」「(それはの責任じゃない。“彼”はいない。スパイダーマンと僕は同じ人間だ。僕たちを分離しようとしても、そもそも“僕たち”なんてものは存在しないんだ。ただ嘘の後ろに身を隠した僕がいるだけ)」

ちょっと驚いたのは、🕷くんがチャーリーを殴ってしまった瞬間のコマを何回も繰り返すネットミームがあるんですけど(嫌いなキャラの画像→🕷くんが殴ってるコマ→嫌いなキャラの画像→🕷くんが殴ってるコマ、みたいな)、作中でも同じようにそのコマがピーターさんのフラッシュバックとして何度もリフレインされる演出があるんですね
明確にPTSDによるフラッシュバックだとわかる演出なので、全然ネタにして良いところじゃないんですけど…
あの小学生レベルのミームが実はちゃんとした演出を下敷きにしているとわかって正直感心しました(インターネットに毒された人間なので不必要なところで感心している)

あとベルリンに行く前にMJとデートしてたピーターさんのモノローグがすごく良かった
「(はじめてタイムズスクエアを見たのは10歳のとき。ベンおじさんと僕は地下鉄を出て通りを渡り、別世界へと足を踏み入れた。ベンおじさんは僕の手を強く握った。おじさんは僕の目をいろいろなものから遮ってくれた。僕はおじさんの指の間から覗き見した。そのエネルギーはとても強烈で、思わず息を飲むほどだった。見るもの、聞くもの、嗅ぐもの、味わうものが山ほどあった、感覚が捉えられる以上のもの。とてもうるさかった。)」
「(今日はグランド・セントラルからシャトルバスに乗る。誰も僕の目を覆ってくれない。僕は自分で物事を選別することを学んだ。見えているようで見えていない。感じない。におわない。自分に触れさせるものを選別する)」

ピーターさんはこんなことを言っていたけれど、一方で彼はヒーローであろうとする限り、目の前で起こっている問題から目を背けることができない
この話では終始ローガンさんがどうにかしてピーターを大人の世界から遮ろうとするが、当のピーターさん本人がその選択を良しとしない。結果としてピーターさんは「自分に触れさせるものを選別する」ことに失敗し、チャーリーを殴って死なせてしまう
そしてピーターさんは繰り返し殺人のフラッシュバックを起こす。目に見えるもの、感触、匂いが、否応なく彼に襲いかかる。最後にピーターさんはJJJからの電話を遮断し(物事に向き合うことを避けて)、MJに救いを求める
『Spider-Man Versus Wolverine』のモノローグは誇張なしで全部いいんですが、一冊読み終えて改めてタイムズスクエアのくだりは白眉って感じでした
作品の根幹を貫くモノローグ
ライター誰だろうと思ったらJim Owsley(クラシックGang Warのライター)で、この作家は本当に「大人」のヒーローであるデアデビル、ウルヴァリンと「子ども」のヒーローであるスパイダーマンを対比して描くのが天才的に上手いと思いました。平伏
« close

📚

Powered by てがろぐ Ver 4.7.0.