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邦訳『ホワット・イフ? side A』(小学館集英社プロダクション 2021)感想

いくつかの話は原書で読んでたのですが、書店でふと手に取ってたら裏表紙にDDがいたので慌てて買いました(単純)
これに収録されている『キャプテン・アメリカが80年代に復活したら?』が噂に違わず名作だったので買って良かった…

「もしもフラッシュ・トンプソンがスパイダーマンだったら?」(『What If? Spider-Man』(2018)#1)
格好良くて可愛くて信念もあるけど蜘蛛に噛まれてないピタくんすぐ死ぬ
フラッシュの「でも、必死に努力して償い続ければ、いつかは本当の正義のヒーローに近づけるのかもかもしれない」はスパイダーマン/ピーター・パーカーさんの核でもあるので泣けた
ピーター・パーカー以外の人間がスパイダーマンになることで逆説的に「ピーター・パーカー/スパイダーマンとはいかなるヒーローなのか」が浮かび上がってくる物語好きです

「もしもピーター・パーカーがパニッシャーだったら?」(『What If? The Punisher』(2018)#1)
ベンおじさん亡き後「パニッシャー」として殺人を厭わずに自警団活動をするピタくん
本筋と関係ないけどパニッシャー🕷くんもピタくんも超絶色っぽい
ラストで正しい道を歩もうとするピタくんが「パニッシャー」を辞めたことでキャッスル家の悲劇が起きるので救いはありません
フランクさんがピタくんが路地裏のゴミ箱に捨てたパニッシャーの衣装を着ているラストの悲哀と美しさ…
ハリーの「誰が〈罰する者〉を罰するんだ?」の台詞、「誰が見張りを見張るんだ」(『ウォッチメン』にも引用されているユウェナリスの詩の一節)だ!と思って興奮したんですが、これって本家『Punisher』にもある台詞なんでしょうか?

「もしもスパイダーマンがファンタスティック・フォーに加わっていたら?」(『What If?』(1977-2011)#1)
『What If?』の第一話がこれ
ファンタスティック・ファイブめちゃくちゃ可愛い
なぜか邦訳だとジョニーくんの一人称が「僕」になってるので僕僕言ってるジョニピタがめちゃくちゃ可愛い〜
この幸せが永遠に続けば良かったのに…
お話のベースに『Amazing Spider-Man』(1963-1998)#1、『Fantastic Four』 (1961-1998)#14が引用されており、元のコミックスに掲載されていたベンの女性差別発言に対しウォッチャーが突っ込むという補正がなされています。「正解」の対応

「もしもマット・マードックがS.H.I.E.L.D.のエージェントになったら?」(『What If?』(1977-2011)#28)
クソガキなマットさんくんが可愛すぎて直視が難しい…
マットさんがクソガキのまま育ったらあんな感じになるんだというのが分かりました(616でも十分クソガキのままでは…)
ジャック・マードックとしっかり再会できるうえにジャックパパもふつうに強いハッピー世界線で安堵
『What If?』(1977-2011)#8といい他の世界線で幸せになっているマットさんを見られるの嬉しい…
クソガキなマットさんくんがフューリーのこと舐めきってるのにしぬほど萌えました

「もしもキャプテン・アメリカが80年代に復活したら?」(『What If?』(1977-2011)#44)
(追記:原題は「Captain America Were Revived Today」(キャプテン・アメリカが今日復活したら?)。80年代を舞台にしており、Make America Great Againをスローガンに掲げたレーガン政権を批判する内容と思われる)
言わずと知られたド名作らしいのですが読んでそう評価される理由がわかりました
まずキャップが復活する現代アメリカが「ユダヤ人と黒人が迫害され共産主義者がアカと呼ばれ弾圧されるディストピアアメリカ」という
反体制組織のツートップがフューリーとピタくんというのが熱いし、ピくんの「デイリー・ビューグルの記事を鵜呑みにしていたんだね。マッカートニー死亡説とか、ゲットーの壁の内側に黒人を押し込むのが自由と権利のうちとかも信じてる?」という台詞がとても良かったです
この世界線においてユーモアを携えながら間違ったことは間違っているとはっきり口にすることのできるピくんという存在、「光」
'60年代カルチャーの申し子なピくんがこの世界線で極左(と認定されるような立ち位置)にいるのは納得しかないし、ピくんがレジスタンスなキャラだからこそ、国家という共同体を一つにまとめるだけのリーダーシップと中道左派思想を備えたキャップの存在がひときわ輝く…
自分自身の存在意義と危うさを完璧に理解して振る舞えるキャップは本当に最高のヒーローだと思いました
キャプテン・アメリカというヒーローの意義に加えてアメリカという国を問い直す傑作、地球上のすべての教科書に乗せて欲しいです

🛡「聞け!君たちはこの男に、アメリカは世界で最も偉大な国だと吹き込まれた。アメリカは世界で最も偉大であり、不純物を取り除けば、純銀のようにより輝くだろうと。アメリカは尊い…その偉大さを保とうと告げられたのだろう!値打ちの知れない至宝であるアメリカ…それを守るためならなにをしても許されると!」
🛡「あえて言おう、アメリカなど何物でもない!あらゆる人の自由のために戦う、その理想なくしては、アメリカなど、たわ言も同然!国家など無意味!国旗も布切れにすぎない!」
🛡「私がヒトラーと戦ったのは、アメリカが偉大だからではない!脆いからだ!ドイツで起きたように人権は簡単に踏みにじられる!我々と彼らに違いなどない。あなた方は、この国を滅ぼすところだった。まだ滅んでいない理由があるとすれば…
🛡「あなた方が決意すれば、まだアメリカに自由を取り戻せる。それだけだ!」
〈長い沈黙、そして…〉
聴客「あ…あれは本物のキャプテン・アメリカ!」
〈その声が広がり…叫びへと変わる〉
群衆「キャップ!キャップ!キャップ!」
🛡「待て!この衣装を着た指導者を崇めても、同じ結果になるだけだ。あなた方がアメリカに与えた傷を私が癒すことはできない!今この瞬間にも路上で人が死んでいる。自由への戦いは始まったばかりだ。私は、あなた方の杖を外したにすぎない。今度はあなた方が自分たちを見つめ、拒んできた人々に手を伸ばし、この衣装に意義を与えた理想を…アメリカを再発見する番だ」
〈会場は沈黙し、外からは銃声が聞こえ…疲れたキャップは反応を待ち、立ち尽くす〉
〈一人が声をあげ、他の者が続き低いざわめきが会場に広がる。反響に消える歌声を…キャップは聞き取った〉
🛡「♪緑に染まり豊かな平野を眺める 山並みよ…」
(アメリカ国旗を背にするキャップ、瞳からは大粒の涙がとめどなく溢れる)
〈アメリカ アメリカ 主の恵みあらんことを 東より西まで 同胞として結ばれんことを〉
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